地方自治体基幹システム再構築最新事情-1

平成22年7月
株式会社流通戦略総合研究所
代表取締役社長 岡積正夫

はじめに

地方自治体の情報システム利用は、昭和50年代前半から始まりました。人口10万人以上の市においては、おしなべて汎用機を導入し、住民記録、税及び福祉などの基幹業務に係るシステムを順次オーダーメードで開発し運用しています。その後情報システム利用の多様化に伴い、汎用機のリプレース、形式的クライアントサーバー型システムへの変更等を行って今日に至っています。導入から長期間利用する中で、様々な課題を抱えており、効率的な事務処理や多様化する市民ニーズへ迅速な対応が困難な状況にあります。

このような背景の中で、平成24年7月の「住民基本台帳法改正・外国人登録法の廃止」、平成24年4月の「介護保険制度改正」など、今後予定されている大規模な法制度改正に向けて具体的目標を完全に達成することが重要となってきており、現行システムの改修では限界にきているため、基幹システムの抜本的見直しが必須となってきています。

このような状況を踏まえて、基幹システム再構築に向けた最新事情を、自治体としての視点で、6回に渡りコラム形式で毎月読者の皆様に情報提供させていただきます。

第1回目である今回は、「新基幹システム再構築の基本的考え方」についてまとめます。

「新基幹システム再構築の基本的考え方」

※画像クリックで拡大

地方自治体における新基幹システムにおいては従来の「行政視点でのサービスの提供」から、市民や企業など「利用者視点での簡素で便利な行政サービスの提供」へとシステム構築の考え方を変えていく必要があります。また、自治体内のデータ連携だけでなく、国も含めた様々なデータ連携(フロントオフィスとバックオフィスのデータ連携など)をスムーズに行うことができるシステムの構築が必要となります。新たなIT技術・ソフト利用(行政統合パッケージ、仮想化など)により、データ連携が容易に実現でき、「効率的事務処理」と「多様化する市民ニーズへの対応」が同時に実現できるメカニズムをこうちくしなければなりません。また同時進行的に進む「電子申請」や「ワンストップサービス」への対応も合わせて実現しなければなりません。

これらのメリットを全て同時並行的に実現するため以下の4つの基本方針を実践することが必須となります。

①汎用機を廃止し、サーバー法式によるパッケージシステムを導入する。
②導入に当たっては地域情報プラットフォームに準拠した標準化され、技術使用及び業務仕様に基づく行政統合パッケージシステムを採用する。
③パッケージの改修は必要最小限にとどめ、業務をパッケージに合わせるよう現状業務の分析を行い、業務のやり方を見直す。
④業務運用、保守・運用、ヘルプデスク、住民コールセンターなど自治体体職員にとって本業とは言えないものを、整理統合し、包括的アウトソーシングを行う。

「行政統合パッケージの特徴」と地方自治体の期待

「行政統合パッケージ」は、様々なIT事業者が作り、多くの自治体で展開されています。が初期段階では、原課が求めるニーズに合わず予定以上の改修が必要で、コストメリットも余り出ませんでした。また原課にとって満足のいくものではありませんでした。これはパッケージそのものの脆弱性ばかりでなく、システムの日時・月次・年間運用計画、業務運用そのものを考慮しないで導入された等に起因するところが多いと考えられます。しかしながら現在では、過去の問題点を克服・改良を加えて、複数の自治体での問題点を解消し、ベースとなる標準装備を毎年レベルアップすることにより、飛躍的に使いがっての良いものになってきています。(これを「ベストプラクティス方式」と呼びます。現在は、以下のような特徴が一般的であります。

・地方自治体において、各原課が必要とする必須要件は網羅されており、必須要件を土台に全体連携システムとして設計されている。
・他自治体での最新導入実績を、必要に応じ、新たに導入する自治体において応用提供されている。
・国の電子自治推進に関するシステム要件は網羅され、それを骨格に基本設計が成されている。
・法制度改正によるシステム改修については、ベンダー責任により施行時にタイムリーに提供される。
・システムに関するヘルプデスク設置により障害・懸案・問題対応がノウハウとして蓄積され、新システム構築時に適用されるようになっている。
・運用方式・セキュリティ対策など、職員では対応しきれないノウハウ・技術が、SLA(サービスレベルアグリーメント)により契約上、保証された形で提供される。

今後の調達においては、上記に挙げた特徴を生かし、単に最適な業務アプリケーションを調達するのではなく。日時、月次、年次の業務ごとの業務運用、システム運用、連携、極小化された情報加工全体を調達対象として、再構築を進めることが最重要であると考えられます。

次回2回目は「システム再構築における現状把握の考え方」について詳述します。